うさぎとはっぱ

春と熾月と玻璃の二次創作同人活動まとめサイト
Open Menu

時計仕掛けのアポカリプス/ジルラチ/古風気味な百の題目007「因果」


 ジルと共に生きたい。その一心でラチアは百七十一年という長い時間を生きてきた。その途方も無い時間の中、最善の未来を掴む為に選択を重ね、彼女は今、ジルの隣にいる。
 ここに至るまでの最後の岐路にあったはずの記憶があやふやなことは、ふとした時に刺さったまま抜けない棘のようにチクリと痛む。何故だか泣きたくなって、胸の辺りが重くなる。
 ちらりと時計を確認したがまだ夜が深い時間。隣で眠るジルの睡眠を邪魔したくはなかったが、しばらく考えた末に静かに胸元に擦り寄った。
「……ジル」
「なあに?」
「起きてたの?」
「君が起きたなあと思って」
「ごめんね」
 泣きたい気持ちと謝りたい気持ちが混ざり合うが、自分を優しく抱き寄せたジルの体温が心地良く、ラチアは次第に落ち着きを取りした。
「朝になったら、今日は何をしようか」
「……まずパンケーキを焼いて、それから散歩に行きたいな」
 そろそろ季節が変わって、いつもとは違う花が咲く。数輪だけ取って押し花でも作ろう。夜にはまた星を。
 ささやかで、涙が出そうなくらい幸せな予定を立てていく。
「大好きよ、ジル」
「僕も大好き」
 星の数ほどあった、一つ一つの選択肢、行動、それに伴う因果。泣いて、泣いて、また泣いて、そして立ち上がって歩いた。
 掴み取った幸せと一緒に今日もラチアは生きていく。それが———彼女のただ一つの望みだ。


▲top