うさぎとはっぱ

春と熾月と玻璃の二次創作同人活動まとめサイト
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NARUTO/ナルヒナ/古風気味な百の題目001「てのひらの幸福」



「ヒナタの手、温かいな」

 繋いでいた手をぎゅっと握られて、ヒナタは照れた様に笑う。
 ――もう顔を真っ赤にして気絶はしない。今も頬を染めることはあるけれど、今思い出してみるとあのいっぱいいっぱいになってしまって倒れるヒナタも可愛かったとナルトは思う。
 二人で手を繋いで、夕飯の買い物をして同じ家に帰る。たったこれだけの事なのに、こんなにも心に灯りが灯ったように温かくなるのを感じた。

「オレさ。小さい頃この季節は寒くて嫌いだったんだ。一人で外で遊んでも冷えるし、家に帰っても寒いし、しょうがねえから布団にくるまってもどこか寒くて中々寝付けなかった。でも今は冬は温かいのを感じられるから好きなんだ」

 どこか歌を口ずさむかのように、ナルトは言葉を重ねていく。

「ヒナタと繋いだ手が温かくて幸せだし、作ってくれた鍋は美味い。二人でこたつに入るのも良いし、何より一緒にベッドで寝るのも最高だってばよ」

 足取りも軽く、繋いでいた手を引っ張ってヒナタを引き寄せる。
 見つめ合うとヒナタの瞳に自分が映し出される。ヒナタ自身はコンプレックスを感じてきたらしいが、ナルトはヒナタの綺麗な瞳が好きだった。

「ナルトくん……?」

 瞳が好きだ。声が好きだ。優しい性格が好きだ。忍びとして強い所も大好きだ。ヒナタの好きな所は数え切れないくらい言える自信がある。
 でも今、伝えたい言葉は。

「オレに温もりを分けてくれてありがとう」

 ヒナタはその言葉に微笑んだ。
 手を繋ぐのもご飯を作るのも一緒にこたつに入るのも、ベッドに二人で横になるのも、ヒナタにとっては幸福過ぎて、一瞬ずつが宝物の様だ。
 繋いだてのひらから温かな幸福を感じると、ナルトは言った。その温もりを、幸福を。

「私が分けてあげられたなら、本当に嬉しい。――でもね。ナルトくん」

 覚悟を決めたように、ヒナタは口を開く。

「これからはナルトくんと一緒にこの子にも、温もりや幸せを分けてあげたいの」

 腹部に手を当てながら笑うヒナタの顔は、もう既に「母」の顔だった。
 ナルトはしばらく呆然した後に、ヒナタの言葉を頭の中で繰り返すと徐々に実感が湧いてきたのだろう。顔をぐっと歪ませると大粒の涙を零してヒナタを抱きしめる。

「ありがとう……!」

 そう言葉にするのがやっとなくらいに絞り出すように口に出した感謝の言葉。
 抱きしめる体に、自分とヒナタの子共がいる。ナルトはヒナタが痛がらない程度にぎゅっと力をこめた。
 もう冬は嫌いじゃない。寒い中に確かに感じる温もりが愛おしくなる。そんな季節だから。



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